地域住民や各機関と協働できるソーシャルケアのプロ集団を目指す

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理事長挨拶

令和2年11月より当法人の9代目理事長に就任した小原眞知子理事長に、
経営理念、新たな取り組み、法人が目指す未来について話をうかがいました。

小原眞知子理事長インタビュー

まずは、日本フレンズ奉仕団の歴史、成り立ちについて教えてください。

「はい。当法人の始まりは、1949年に始まった保育事業です。その際の活動母体は、戦後の混乱期に子どもたちのための託児施設を作った“アメリカ・フレンズ奉仕団”でした。この団体は、キリスト教クェーカー教徒の社会奉仕団であり、1947年にはノーベル平和賞を受賞し、1953年に社会福祉法人日本フレンズ奉仕団を設立します。その後、運営を日本側に委譲し、現在に至るまで、社会の要請に応えながら、社会福祉サービスの提供を行って参りました」

現在、高齢者福祉部門では特別養護老人ホーム、在宅サービスセンター、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所、児童福祉部門では保育所を運営していますが、共通する経営理念を教えてください。

「子どもから高齢者まで、地域住民のよりよい生活(ウェルビーイング)の実現に向けて、生活支援の中核として専門的で質の高い社会福祉サービスを提供すること。さらに、子どもの健やかな成長と高齢者が健康で自立した生活が送れるように、利用者自身を最大限に尊重した支援を行うことも大切にしています。これらの理念を実現するためにも、地域住民の方々や各関係機関と協働できるソーシャルケアのプロ集団を目指しています。
最後に聖書から、『わたくしたちは、人々の良き隣人になります』という御言葉を掲げています。

19年振りに経営理念・方針を改定されましたが、重視している点は何でしょう。

「これまでと大きく違う点として、科学的な支援があります。『ソーシャルケアのプロ集団を目指す』という理念にも通じますが、熱いハートをもちながらもクールブレイン、つまり客観的な科学的知見をもとにケアを実践していくと言えばいいでしょうか。
また、私自身が特に重視しているのが『個人の尊厳』です。科学的な支援には、ともすると効率性や効果性のみが求められますが、それにもまして、その方の生活の質が担保されることは何より重要です。例えば、高齢者の方のこれまでの生き方、希望される今の、そしてこれからの生き方を尊重し、ご本人の『私はこうしたい』という声に寄り添っていくことが本来の支援のあり方だと考えています。この点は法人職員に周知徹底し、共有しています。だからこそ、科学的な支援と個人の尊厳のバランスを常に意識しながら入所者の皆さん一人ひとりと向き合うことが大切だと思います」

「尊厳」の重視について具体的な取り組み例を教えていただけますか

「尊厳」の重視について具体的な取り組み例を教えていただけますか。

「『食』をとても大切なものだと考え、できる限り常食化に取り組むことが私たちの方針です。高齢者に対して誤嚥リスクを避けるために流動食などを選択するという話もよく聞きますが、ご本人に少しでも食べる能力が残っているのであれば、その能力を最大限に生かしていくということです。手間や時間がかかるなど施設側の都合ではなく、入居者がいかに尊厳をもって生きられるかを最優先します。当法人では歯科医、歯科衛生士の方々の来訪数を増やし、一人ひとりがきちんと診察を受け、必要な方には義歯の作成も行ったうえで、常食化に向けての取り組みを行います。咀嚼することで、脳が刺激され、身体全体の機能が回復するとも言われます。
また、当法人では喫茶スペースでのティータイムを設け、入居者同士でケーキや紅茶、コーヒーを楽しむ時間を提供することで社交性の維持にも努めています。口から飲食し、食を楽しみ、みんなと食べる。このような人間らしい生き方を最期までできる限り支えていくことが、個人の尊厳を最大限に尊重するケアに通じると思います」

児童福祉部門についても教えてください。

「個人の尊厳は児童福祉部門でも同様で、子どもの権利を尊重しています。令和4年度からの経営方針には、新たにSDGs(持続可能な開発目標)を取り入れました。例えば、『食べ物を大切にする』ことからフードロスや環境について子どもたちに考えるきっかけを与えるプログラムなども新たな取り組みとして実践し、持続可能な社会を目指す中での保育の役割を考え取り組んでいます。また、創造性豊かな保育の実践のために、造形の専門家である新園長を招き、新たな造形のプログラムも積極的に取り入れていきます」

保育所では外国籍や障がいをもったお子さんの受け入れにも積極的ですね。

「保育園は子どもたちの社会の入口ですが、同時に今後ますます多様化・複雑化する社会の入口としての役割も果たしていきたいと考えています。医療的支援を必要としているお子さんのための専門家も在籍していますので、安心してお預けいただけると思います」

保育園と特別養護老人ホームが同じ敷地内にあることも大きな特長です。

「高齢者と園児との世代間交流プログラムを盛んに行っていますが、高齢者は子どもたちから活力を得ているのが手にとるようにわかります。また、幼少期に高齢者に接する機会を得ることは、園児たちの高齢者に対するイメージが非常によくなることがわかっています。これらの交流は両者にとってとても意義のあるものだと考え、私たちの強みでもありますので、今後もさらなる交流を図っていきたいと思います」

地域社会に開かれた施設であることも大切なミッションだとうかがいました。

「地域の方々が自由に出入りできる施設、そして有益な情報をみなさんに発信できる施設を目指しています。施設の中だけで完結するのではなく、あくまでも地域社会の中にある施設であることが何より重要だと思います。フレンズ・サポーターというボランティアの方々の協力を得ながら、電球の取り換え、家具の移動といった地域の高齢者のちょっとした困りごとを低額(300円)で請け負うフレンズ・サポートお助け隊や、入居者と同じ内容のお弁当を提供する宅配サービスなどの活動も行っています。ご利用いただく地域の高齢者の見守りも兼ねた活動ですので、何かあった際には当法人が設置運営する地域包括支援センターとの適切な連携を行うことで、地域社会への貢献へとつながるものだと考えています」

本年度から人材育成室を立ち上げ、支援をする側の人材育成の体制も整備されました

令和4年度に人材育成室が開設され、支援をする側の人材育成の体制も整備されました。

「研修、キャリアアップのための奨励金など専門性向上のサポートはもちろんですが、人として豊かになってもらうために余暇の時間を利用した英会話、フラワーアレンジメント、ヨガ、アロマセラピー、料理などのプログラムも提供予定です。さらに、職員のストレス緩和のためのカウンセリングシステムを導入し、職員もケアされる存在として、法人が支えていきます。職員の人としての豊さやメンタルの健康は、入居者や園児へのケアにも確実に表れます。職員を大切にすることは法人としての大切な役割と考えています」

最後に今後の日本フレンズ奉仕団の未来、目指すものについて教えてください。

「利用者のみなさん、そのご家族、職員、地域、社会、日本、そして世界がともに支え合い、利益を享受し合える関係が成り立つシステムを構築し発信し続ける──。そんな社会福祉法人を目指して職員一同、地域のみなさんの協力を得ながら、日々努めてまいります。これからの日本フレンズ奉仕団にご期待くださいませ」